マイホームをローンで買った場合、確定申告をすると「住宅ローン控除」を受けることができ、税金が安くなります。
マイホームを購入してから10年間、住宅ローン残高のうち最大1%が毎年の所得税から控除されます。
住宅ローンの所得税控除額は10年間で最大400万円(認定長期優良住宅の場合は最大500万円)と、大きな額になります。サラリーマンの場合はかなりの税金が還付され、個人事業主の場合は大きな節税になります。
「住宅ローン控除」は、所得税対策として2019年6月(平成31年6月)まで有効です。また、2019年以降も延長される可能性があります。
住宅ローン控除を受けるには、いくつか条件があります。
住宅を購入する際には、控除を受けられるかどうかを事前に確認しておきましょう。
住宅ローン控除とは
住宅ローン控除は入居した年から10年間、毎年年末の住宅ローン残高の1%を所得税から控除できる制度です。
通常の住宅の場合 | 認定長期優良住宅の場合 | |
---|---|---|
入居年 | 2014年4月(平成26年4月)以降 | |
控除率 | ローン残高の1% | |
控除期間 | 入居した年から10年間 | |
控除の対象となる住宅ローン残高 | 4,000万円まで | 5,000万円まで |
住宅ローン控除の額 | 40万円まで | 50万円まで |
10年間の最大控除額 | 400万円 | 500万円 |
入居年
マイホームを購入して、2014年4月(平成26年4月)以降に入居した人が対象です。
入居日は住民票を移した日が基準になります。住民票を写すのを忘れていた場合は、住民票は絶対的な基準ではないので、税務署に相談してみましょう。
控除率
確定申告の対象となる年のローン残高の1%を所得税から控除することができます。
例えば、2017年2月~3月に行う確定申告は、2016年の収入が対象になるので、2016年末時点の住宅ローン残高の1%が控除金額になります。
控除期間
控除ができるのは入居した年から10年間です。
ボーナスなどで元本を繰り上げ返済すると、ローン残高が減って受けられる控除額も減ってしまいます。
低金利時代の今は、繰り上げ返済をしても、ローン総額の利子はそれほど減りません。
住宅ローン控除を考えると、繰り上げ返済は11年目以降に行った方がお得なこともあります。入居してから10年間の繰り上げ返済は、住宅ローン控除で返ってくる税金も考慮して行いましょう。
控除の対象となる住宅ローン残高
控除の対象となる住宅ローン残高は4,000万円までです。
4,000万円よりも住宅ローンが多い場合でも、対象は4,000万円までです。
「認定長期優良住宅」の場合は、控除の対象となる住宅ローン残高の上限が5,000万円になります。
住宅ローン控除の額
通常の住宅では、控除の対象となる住宅ローン残高の最大額は4,000万円です。
毎年受けることができる住宅ローン控除の最大額は、4,000万円の1%で40万円になります。
「認定長期優良住宅」の場合は、控除の対象となる住宅ローン残高の最大額は5,000万円です。
毎年受けることができる住宅ローン控除の最大額は、5,000万円の1%で50万円になります。
10年間の最大控除額
10年間では、40万円×10年で最大で400万円の控除を受けることができます。
「認定長期優良住宅」の場合は、10年間で、50万円×10年で最大で500万円の控除を受けることができます。
「認定長期優良住宅」は控除内容が有利になる
「認定長期優良住宅」は、耐久性、耐震性、省エネ性能などに優れた住宅が認定されます。
「認定長期優良住宅」の場合、控除の対象となる住宅ローン残高の上限が4,000万円から5,000万円にる、控除額が40万円から50万円になるなど、控除内容が有利になります。
住宅ローン控除の条件
住宅ローン控除を受けるには、いくつかの条件があります。すべての条件を満たしていることが必要です。
ローンや年収についての条件
1. ローン返済期間が10年以上
住宅ローンの返済期間は10年以上の長期である必要があります。9年以内の短期の住宅ローンでは控除を受けることができません。
2. 年収が3,000万円以下
住宅ローン控除を受けるためには、年収が3,000万円以下である必要があります。年収が3,000万円を超える年は住宅ローン控除を受けることはできません。
3. 自分が住む住宅のローンである
住宅ローン控除を受けられるのは、自分が住む家のローンのみです。土地のみの購入や別荘、セカンドハウスは控除を受けることができません。
4. 引き渡しから6ヶ月以内に入居し、控除を受ける年の年末まで住み続ける
住宅ローン控除を受けるには、引き渡しから6ヶ月以内に入居し、控除を受ける年の年末で住み続ける必要があります。
入居の判断は、基本的に住民票で行います。引き渡しから6ヶ月以内、年末までに住民票の移転を行う必要があります。
5. 自己と生計を一にしている親族からの購入ではない
生計を一にしている親族からの購入には適用されません。
6. 家族や親族からの借入金ではない
家族や親族からの借入金には適用されません。
7. 買い替えの場合、他の控除や特例を受けていない
新しい家に住んだ年と、その前後2年間に「3000万円の特別控除」や「買い替え特例」などを受けていると適用されません。
住宅についての条件
住宅ローン控除を適用するには、住宅にもいくつか条件があります。
1. 床面積が50平方メートル以上ある
床面積が50平方メートル以上ある必要があります。床面積は登記簿の面積で確認します。マンションの場合は専有面積になります。パンフレットに表示される面積は、登記簿よりも小さい場合があります。50平方メートルぎりぎりの場合は、購入前に不動産屋に登記簿の床面積を確認しておきましょう。
2. 新築後20年以内(耐火建築の場合は25年以内)で、地震に対する安全性の基準に適合している
中古住宅の場合の条件です。
新築後20年以内である必要があります。耐火建築のマンションなどは新築後25年以内が条件になります。
また、地震に対する安全性の基準に適合している必要があります。新築住宅は必ずこの条件を満たしているので、問題ありません。
3. 床面積の2分の1以上が居住用である
店舗併用住宅の場合の条件です。
床面積の2分の1以上が居住用である必要があります。
4. 増改築の場合、工事費が100万円以上である
増改築に関するローンについては、工事費が100万以上の場合、住宅ローン控除の適用を受けることができます。
6ヶ月以内に入居できない場合でも住宅ローン控除は受けられる
住宅ローン控除を受けるには、「引き渡しから6ヶ月以内に入居し、控除を受ける年の年末まで住み続ける」必要があります。
しかし、仕事の関係などで購入者本人がしばらく住宅に住めないこともあると思います。そのような場合、一般的には下記条件のいずれかを満たせば、住宅ローン控除を受けることができます。
- 入居できない理由が、転勤や療養など、やむを得ない理由があること
- 家族(配偶者、子ども、親)のうち誰か1人以上が住んでいること
1については、転勤辞令など、事由を証明する書類が必要になります。
2については、実際に住んでいる家族の住民票の提出が必要になります。
適用が可能かどうかは税務署が判断します。これらのケースの場合は自己判断をせず、必ず事前に税務署に相談しておきましょう。
住宅ローン控除の確定申告の方法
初年度は確定申告が必要
住宅ローン控除を受けるためには、初年度は必ず自分で確定申告を行う必要があります。
サラリーマンの場合は、会社の年末調整はいつも通りに行った上で、2月16日から3月15日の間に自分で税務署に確定申告書を提出します。
サラリーマンは2年目以降は年末調整だけで控除を受けられる
サラリーマンは初年度だけ確定申告を行えば、2年目以降の申告は不要です。2年目以降は年末調整の際に、ローンを組んでいる金融機関から送られてくる「年末借入残高証明書」と「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」を会社に提出すれば、年末調整だけで控除を受けることができます。
「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」は、初めて住宅ローン控除の申告をした年の10月頃に税務署から送られてきます。この時、残りの適用期間が9年間の場合、9枚まとめて送られてきます。毎年1枚使うので、無くさないように注意します。
「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」を紛失した場合は、税務署で再交付の手続きが必要になります。
年末調整を忘れた場合は、自分で確定申告を行うことで控除を受けることができます。
サラリーマン以外の個人事業主は2年目以降も自分で申告する必要があります。
住宅ローンの確定申告に必要な書類
住宅ローンの確定申告の際に必要な書類をまとめました。
申告書
- 確定申告書
- 住宅借入金特別控除額の計算明細書
申告書に添付する書類
- 年末借入残高証明書
毎年、金融機関から送られてきます。 - 住民票の写し
- 給与所得の源泉徴収票
勤務先の会社からもらいます。 - 土地・建物の登記事項証明書
法務局で発行できます。 - 売買契約書、請負契約書の写し
契約書のコピーを提出します。
確定申告を忘れた場合、過去5年間まで遡って申告できる
サラリーマンの方で、うっかり住宅ローンの確定申告を忘れてしまった、という方は安心してください。
確定申告は過去5年間まで遡って申告することができます。
5年以内に申告をすれば、過去の住宅ローンの控除額についても還付を受けることができます。
確定申告をしたのに、住宅ローンについて記入を忘れた場合
一度提出した確定申告書に、住宅ローン控除について記入するのを忘れてしまった場合は、修正をすることはできません。
一度提出した確定申告について修正する場合は、「更正の請求」が必要になります。これは、確定申告に誤りがあって、所得税が減額となる場合に行うものです。
それなら、「更正の請求」を行えばいいのでは?と思われるかもしれませんが、「更正の請求」には誤りが認められるものと認められないものがあります。
残念ながら、住宅ローン控除については、原則認められません。そのため、確定申告を行ったのに住宅ローン控除の申請が漏れてしまった場合、修正することができません。
「住宅ローン控除」以外にも住宅にはいろいろな控除がある
「住宅ローン控除」以外にも、住宅にはいろいろな控除があります。
控除・特例の種類 | 対象 | 対象となる額 | 控除率 | 控除最大額 |
---|---|---|---|---|
認定長期優良住宅等特別税額控除 | 認定長期優良住宅の認定を受けるたの工事費用 | 250万円まで | 10% x 1回 | 25万円 |
住宅特定改修特別税額控除 | バリアフリーや省エネの工事費用 | 250万円まで | 10% x 1回 | 25万円 |
住宅耐震改修特別控除 | 耐震工事の費用 | 250万円まで | 10% x 1回 | 25万円 |
三世代同居に対応した住宅リフォームの特例 | 三世代同居に対応した住宅の改修工事の費用 | 250万円まで | 1~2% x 5年 または 10% x 1回 |
25万円 |
認定長期優良住宅等特別税額控除
「認定長期優良住宅等特別税額控除」では、「認定長期優良住宅」の認定を受けるためにかかった費用の10%を税額から控除することができます。
控除期間 | 1回限り |
---|---|
控除率 | 10% |
控除の対象 | 250万円まで |
最大控除額 | 25万円 |
「住宅ローン控除」か「認定長期優良住宅等特別税額控除」、いずれかを選ぶことができるので、税額が有利になる方を選びましょう。
住宅特定改修特別税額控除
バリアフリー工事や省エネ工事を行った場合、工事費用の10%を所得税から控除することができます。
控除期間 | 1回限り |
---|---|
控除率 | 10% |
控除の対象 | 250万円まで |
最大控除額 | 25万円 |
住宅耐震改修特別控除
耐震改修を行った場合、工事費用の10%を所得税から控除することができます。
控除期間 | 1回限り |
---|---|
控除率 | 10% |
控除の対象 | 250万円まで |
最大控除額 | 25万円 |
三世代同居に対応した住宅リフォームの特例
平成28年度からの新制度です。
三世代同居に対応した住宅の改修工事を行った場合、5年間ローン控除を受けることができます。
ローン | 自己資金 | |
---|---|---|
控除期間 | 5年間 | 1回限り |
控除率 | 三世代同居改修工事に係る工事費用の2% 上記以外の工事費用の1% |
10% |
控除の対象 | ローン残高の250万円まで | 250万円まで |
最大控除額 | 5万円 x 5年 | 25万円 x 1回 |
改修工事の内容は、キッチン、浴室、トイレ、玄関のうちいずれかの増設工事を行い、いずれか2つ以上が複数になる必要があります。
例えば、キッチンとトイレを増設して、キッチン x 2、浴室 x 1、トイレ x 2、玄関 x 1となる場合です。
控除額は年末のローン残高の2%です。対象となるローン残高は最大250万円です。250万円 x 2%で最大5万円を控除できます。
ただし、ローンの内、上記の改修工事内容に該当しない部分については、控除できるのはローン残高の1%です。
ローンではなく自己資金の場合は、工事費用の10%を控除することができます。対象となる工事費用は最大250万円です。