クレジットカードの支払いと引き落としの仕訳

事業用のクレジットカードでの支払いは原則として、決済時と引き落とし時の2回仕訳が必要になります。ただし、簡便的な方法として、決算をまたがない場合には、決済時には仕訳の記録をせずに、引き落とし日にまとめて費用計上することができます。

また、個人用のクレジットカードで事業用の経費を支払った場合には、決済時に「事業主借」で処理します。

クレジットカードの支払いと引き落としの仕訳を、具体的な仕訳例とともに解説します。

1. 事業用のクレジットカードの場合(原則)

クレジットカードの引き落とし口座が事業用口座の場合、原則として、決済時に「未払金」として費用計上し、口座からの引き落とし時に支払いの仕訳をします。費用計上の原則である発生主義に則った方法です。

毎月15日締め、翌月10日払いのクレジットカードの想定で仕訳を見ていきましょう。

11/15 消耗品3,000円をクレジットカードで購入した。

借方金額貸方金額摘要
消耗品費3,000円未払金3,000円消耗品購入(クレジットカード)

引き落とし口座が事業用口座となっているクレジットカードで決済をした場合、貸方に負債である「未払金」を計上します。借方には適切な勘定科目で費用を計上します。

11/15 個人用の服5,000円をクレジットカードで購入した。

借方金額貸方金額摘要
事業主貸5,000円未払金5,000円個人使用分(クレジットカード)

事業用のクレジットカードを個人用に使用した場合、費用計上はせず、借方は「事業主貸」として仕訳を行います。事業用のお金で事業主個人の支払いをしたので、事業主個人に5,000円を貸した状態であることを表しています。

12/10 事業用の口座から11月締め分が引き落とされた。

借方金額貸方金額摘要
未払金8,000円普通預金8,000円クレジットカード引き落とし
10月16日~11月15日分

口座からの引き落とし時は、「未払金」が減少するので借方に「未払金」を記入します。貸方は「普通預金」「当座預金」など引き落としが行われる口座種類を記入します。

12/15 タクシー代1,000円をクレジットカードで支払った。

借方金額貸方金額摘要
旅費交通費1,000円未払金1,000円タクシー代(クレジットカード)

12/31 決算整理仕訳

仕訳なし。

タクシー代として支払った1,000円の引き落としが決算をまたぎますが、期中に「未払金」として計上しているので、決算整理仕訳は必要ありません。

1/10 事業用の口座から12月締め分が引き落とされた。

借方金額貸方金額摘要
未払金1,000円普通預金1,000円クレジットカード引き落とし
11月16日~12月15日分

前年から決算をまたいだ「未払金」1,000円があるので、口座からの支払いの仕訳を行います。

2. 事業用のクレジットカードの場合(簡便的な方法)

簡便的な方法として、決算をまたがない場合には、決済時には仕訳の記録をせずに、引き落とし日にまとめて費用計上することができます。ただし、決算をまたぐ分については「未払金」として計上する必要があるので注意が必要です。この方法は期中現金主義・期末発生主義といいます。

原則法と同じ取引の仕訳を見ていきましょう。クレジットカードは毎月15日締め、翌月10日払いの想定です。

11/15 消耗品3,000円をクレジットカードで購入した。

仕訳なし。

簡便的な方法の場合、決済時には仕訳を行いません。引き落とし時に「消耗品費」として計上することになります。

11/15 個人用の服5,000円をクレジットカードで購入した。

仕訳なし。

簡便的な方法の場合、決済時には仕訳を行いません。引き落とし時に「事業主貸」として計上することになります。

12/10 事業用の口座から11月締め分が引き落とされた。

借方金額貸方金額摘要
消耗品費3,000円普通預金8,000円クレジットカード引き落とし
10月16日~11月15日分
11月15日分 消耗品購入
事業主貸5,000円11月15日分 個人使用分

簡便的な方法の場合、引き落とし時にまとめて仕訳を行います。

12/15 タクシー代1,000円をクレジットカードで支払った。

借方金額貸方金額摘要
旅費交通費1,000円未払金1,000円12月15日 タクシー代(クレジットカード)

簡便的な方法の場合、決算をまたぐ利用分については、決済時に「未払金」として計上する必要があります。

12/31 決算整理仕訳

仕訳なし。

タクシー代として支払った1,000円の引き落としが決算をまたぎますが、期中に「未払金」として計上しているので、決算整理仕訳は必要ありません。

1/10 事業用の口座から12月締め分が引き落とされた。

借方金額貸方金額摘要
未払金1,000円普通預金1,000円クレジットカード引き落とし
11月16日~12月15日分

3. 個人のクレジットカードの場合(事業主借で処理)

クレジットカードの引き落とし口座が個人口座の場合は、決済時には貸方は「未払金」ではなく「事業主借」で処理することになります。また、引き落とし時の仕訳は必要ありません。決済時に事業主個人が支払ったという記録を「事業主借」として残しておくだけでいいのです。

これまでと同じ取引で仕訳を見ていきましょう。クレジットカードは毎月15日締め、翌月10日払いの想定です。

11/15 消耗品3,000円をクレジットカードで購入した。

借方金額貸方金額摘要
消耗品費3,000円事業主借3,000円消耗品購入(クレジットカード)

引き落とし口座が個人用口座となっているクレジットカードで決済をした場合、貸方に「事業主借」を計上します。事業主個人の資金から支払いをしたという記録を残すことになります。借方には適切な勘定科目で費用を計上します。

11/15 個人用の服5,000円をクレジットカードで購入した。

仕訳なし。

個人用のクレジットカードで個人用に使用しただけなので、当然、仕訳は必要ありません。

12/10 個人用の口座から11月締め分が引き落とされた。

仕訳なし。

口座からの引き落としの仕訳は必要ありません。個人用の口座から引き落としがあるだけなので、事業には関係がないためです。

12/15 タクシー代1,000円をクレジットカードで支払った。

借方金額貸方金額摘要
旅費交通費1,000円事業主借1,000円タクシー代(クレジットカード)

12/31 決算整理仕訳

仕訳なし。

タクシー代として支払った1,000円の引き落としが決算をまたぎますが、決算整理仕訳は必要ありません。「事業主借」1,000円が期末残高として残りますが、事業主のお金で支払ったという記録を残しただけなので、翌期には繰り越さず、翌期はゼロからのスタートとなります。

1/10 事業用の口座から12月締め分が引き落とされた。

仕訳なし。

4. 各方法のメリットとデメリット

引き落とし口座メリットデメリット
事業用口座
(原則法)
決算整理仕訳が不要決済の度に記帳が必要
事業用口座
(簡便法)
引き落とし時にまとめて記帳できる何のために支払った費用なのか思い出しながら記帳する必要がある
決算をまたぐ利用分についてのみ未払金として計上が必要
個人用口座決算整理仕訳が不要
引き落とし時の仕訳が不要
決済の度に記帳が必要

事業用のクレジットカードを使用する場合、引き落とし時にまとめて記帳できる簡便法は、何のために支払った費用なのか思い出しながら記帳する必要があるため意外と手間がかかります。決済ごとに記帳を行う原則法の方が記憶が新しいうちに記帳が行えます。

個人で活動しているフリーランスなど、小規模な個人事業主の場合は、事業専用のクレジットカードは作成せず、個人用のクレジットカードを使用して、個人用口座から引き落とす方法がシンプルでおすすめです。

詳しくは『フリーランスの経費は、すべて「事業主借」で処理する!』を参照してください。