信用保証料の仕訳(勘定科目は支払手数料)

これまで融資を利用してこなかった事業者でも、コロナの影響により融資の申し込みをしたというケースが増えています。融資を受ける際に「信用保証料」を支払うことがあります。今回は、この「信用保証料」の仕訳についてご紹介します。

信用保証料とは

信用保証料とは、中小企業や個人事業主が金融機関から融資を受ける際に、信用保証協会に信用保証をしてもらうために支払う手数料のことです。「保証料」と簡略化して呼ぶこともあります。

公的機関である信用保証協会に信用保証をしてもらうことで、融資が受けやすくなるというメリットがあります。

信用保証料の勘定科目

信用保証料の勘定科目と仕訳は繰上げ返済した際の返戻の有無、保証期間によっていくつかのパターンがあります。

信用保証料の勘定科目は「支払手数料」「長期前払費用」「前払費用」「雑収入」「繰延資産償却」などを使います。

信用保証料の消費税の取扱い

信用保証料の消費税の取扱いは、非課税仕入に該当します。

信用保証料の仕訳(返戻がある場合)

返戻とは、借入金を繰り上げ返済した際に未経過期間の信用保証料が返金されることです。

保証料の支払いは借入時に一括して行いますが、借入の契約条件に返戻がある場合、信用保証料は借入期間終了まで各期に分割して費用処理します。

繰り上げ返済した際に信用保証料の返戻があるということは、まだ提供を受けていないサービス分の料金が返金されると捉えることができます。「信用保証」というサービスの提供は借入時点では完了しておらず、返済完了まで時間が経過するにつれて提供されると考えることができます。そのための費用である信用保証料についても支払い時に一括して費用処理するのではなく、次期以降の分はサービスが提供されるにつれて各期に分割して費用処理することになります。

保証期間が当期期間内のみの場合

保証期間が当期期間内のみの場合は「支払手数料」として借入時に一括して計上します。仕訳は次のようになります。

借方金額貸方金額摘要
支払手数料
(非課税仕入)
12,000円普通預金12,000円信用保証料支払い

月次決算の場合

月次決算を行っているなど毎月正確な費用を把握したい場合は、支払い時に「前払費用」として計上し、毎月「支払手数料」に振替するという仕訳もできます。

日付借方金額貸方金額摘要
4/1前払費用12,000円普通預金12,000円信用保証料支払い(保証期間12ヶ月)
4/30支払手数料
(非課税仕入)
1,000円前払費用1,000円信用保証料4月分
5/31支払手数料
(非課税仕入)
1,000円前払費用1,000円信用保証料5月分

各月の保証料は月割りで計算します。

翌期以降の保証期間が1年未満の場合

翌期以降の保証期間が1年未満の場合、支払い時に当期の分は「支払手数料」として計上、翌期の分は流動資産として「前払費用」に計上します。翌期期首に「前払費用」から「支払手数料」に振替えます。

3月決算の企業でx1年10月1日に信用保証料12ヶ月分として12,000円を支払った場合の仕訳は次のようになります。

日付借方金額貸方金額摘要
x1/10/1
(支払時)
支払手数料
(非課税仕入)
6,000円普通預金12,000円x1期6ヶ月分/信用保証料支払い(保証期間12ヶ月)
前払費用6,000円x2期6ヶ月分
x2/4/1
(期首)
支払手数料
(非課税仕入)
6,000円前払費用6,000円x2期6ヶ月分振替

翌期以降の保証期間が1年以上の場合

翌期以降の保証期間が1年以上の場合、支払い時に当期の分は「支払手数料」として計上、翌期以降の分は流動資産として「長期前払費用」に計上します。決算時に、1年以内に費用化するもの(つまり翌期に費用化するもの)は「前払費用」に振替します。

3月決算の企業でx1年10月1日に信用保証料24ヶ月分として24,000円を支払った場合の仕訳は次のようになります。

日付借方金額貸方金額摘要
x1/10/1
(支払時)
支払手数料(非課税仕入)6,000円普通預金24,000円x1期6ヶ月分/信用保証料支払い(保証期間24ヶ月)
長期前払費用18,000円x2期~x3期18ヶ月分
x2/3/31
(決算)
前払費用12,000円長期前払費用12,000円x2期12ヶ月分振替
x2/4/1
(期首)
支払手数料(非課税仕入)12,000円前払費用12,000円x2期12ヶ月分振替
x3/3/31
(決算)
前払費用6,000円長期前払費用6,000円x3期6ヶ月分振替
x3/4/1
(期首)
支払手数料
(非課税仕入)
6,000円前払費用6,000円x3期6ヶ月分振替

繰り上げ返済により返戻金が入金した場合

返戻ありの契約の場合、繰り上げ返済を行うことにより返戻が発生します。返戻のタイミングは、全額返済が完了した時と返済期間中の2パターンがあります。契約で1,000円未満は返金しないと規定されていることがあります。

全額返済が完了した時の返戻

全額返済が完了した時の返戻は、全額を「雑収入」に計上します。

返戻金として1,000円が入金された場合の仕訳は次のようになります。

借方金額貸方金額摘要
預金1,000円雑収入1,000円信用保証料返戻

返済期間中の返戻

返済期間中はまだ「長期前払費用・前払費用」が残っているので、返済期間中の返戻については「長期前払費用・前払費用」の残高と相殺し、差額があるときは「雑収入」として計上します。

長期前払費用の残高が2,000円のときに、返戻金として3,000円が入金された場合の仕訳は次のようになります。

借方金額貸方金額摘要
預金3,000円雑収入1,000円信用保証料返戻
長期前払費用2,000円長期前払費用残高と相殺

信用保証料の仕訳(返戻がない場合)

借入の契約条件に返戻がない場合、信用保証料は支払時に一括して「長期前払費用(繰延資産」として計上し、借入期間終了まで「繰延資産償却」で償却します。

繰り上げ返済しても信用保証料の返戻がないということは、「信用保証」というサービスの提供が借入時点で完了していると考えることができます。サービスの提供が完了しているので、繰り上げ返済をしても返戻がないという理屈です。

しかし、サービスの提供は完了していますが、「信用保証」によって借入ができたというその効果は返済期間終了まで続くと考えることができます。そこで、信用保証料については支払い時に「繰延資産」として計上し、借入期間終了まで定額法で償却していくことになります。

ただし、税務上の繰延資産は、会社法上は繰延資産とされていないため、繰延資産の部には計上せず、長期前払費用として計上します。このあたりの理屈は複雑ですので、細かい点は気にせず、そう言うものだと割り切ってしまって構いません。

保証料が20万円以上の場合

3月決算の企業でx1年10月1日に信用保証料24ヶ月分として24,000円を支払った場合の仕訳は次のようになります。

日付借方金額貸方金額摘要
x1/10/1
(支払時)
長期前払費用(繰延資産)240,000円普通預金240,000円信用保証料支払い(保証期間24ヶ月)
x2/3/31
(決算)
繰延資産償却60,000円長期前払費用(繰延資産)60,000円x1期6ヶ月分償却
x3/3/31
(期首)
繰延資産償却120,000円長期前払費用(繰延資産)120,000円x2期12ヶ月分償却
x4/3/31
(期首)
繰延資産償却60,000円長期前払費用(繰延資産)60,000円x3期6ヶ月分償却

保証料が20万円未満の場合

20万円未満の繰延資産は支払時に全額を費用処理することが認められています。

信用保証料として12,000円を支払った場合の仕訳は次のようになります。

借方金額貸方金額摘要
支払手数料
(非課税仕入)
12,000円普通預金12,000円信用保証料支払い