繰越処理
普通預金の残高や、未入金の売掛金、賃貸物件の敷金などは、翌年の最初に繰越処理をします。
繰越処理の相手科目は「元入金」になります。
事業を開始時の預金や売掛金も「元入金」を相手方として記帳します。
未入金の売掛金の繰越処理の仕訳例
11月~12月の売掛金1万円が未入金だった場合の繰越処理の仕訳です。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
1/1 | 売掛金 10,000円 | 元入金 10,000円 | (前期繰越)Googleアドセンス 11月~12月分売上 |
売掛金なので、借方の勘定科目は「売掛金」になります。
売掛金の繰越処理なので、貸方の勘定科目は「元入金」になります。
繰越処理が必要な勘定科目
繰越処理をするのは、勘定科目で「資産」に分類される科目です。これらは年度を超えて残るお金なので、繰越処理が必要です。
「事業主貸」と「事業主借」は事業主個人とのお金のやり取りの記録なので、繰越処理の必要はありません。
「収益(売上)」と「経費」についても、その年度内でのお金の流れの記録なので、繰越処理の必要はありません。
勘定科目のサンプル
資産
- 普通預金
- 売掛金
- 敷金・保証金
- 事業主貸
資本
- 事業主借
- 元入金
収益
- 売上
経費
- 地代家賃
- 水道光熱費
- 通信費
- 消耗品費
- 新聞図書費
- 支払手数料
- 損害保険料
繰越処理の実例
1年目
たとえば、1年目の仕訳が次のようだったとします。分かりやすいように売上は5月と12月だけに発生したとして、経費は1回分のみ計上しています。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
1/1 | 普通預金 50,000円 | 元入金 50,000円 | (前期繰越)普通預金 |
1/1 | 売掛金 5,000円 | 元入金 5,000円 | (前期繰越)Googleアドセンス 12月分売上 |
1/21 | 普通預金 5,000円 | 売掛金 5,000円 | Googleアドセンス 12月分入金 |
5/31 | 売掛金 130,000円 | 売上 130,000円 | Googleアドセンス 5月分売上 |
6/21 | 普通預金 130,000円 | 売掛金 130,000円 | Googleアドセンス 5月分入金 |
7/1 | 消耗品費 40,000円 | 事業主借 40,000円 | 細かな経費いろいろ |
8/1 | 事業主貸 10,000円 | 普通預金 10,000円 | 事業主生活費引き出し |
12/31 | 売掛金 10,000円 | 売上 10,000円 | Googleアドセンス 12月分売上 |
12/31 | 売掛金 10,000円 | 売上 10,000円 | マイクロアド 12月分売上 |
各科目の合計は次のようになります。元入金は、期初と期末で同じ額になります。事業主借と事業主貸は、期初がありません(0円になります)。
資産
科目 | 期初 | 期末 |
---|---|---|
普通預金 | 50,000円 | 175,000円 |
売掛金 | 5000円 | 20,000円 |
事業主貸 | – | 10,000円 |
資本
科目 | 期初 | 期末 |
---|---|---|
事業主借 | – | 40,000円 |
元入金 | 55,000円 | 55,000円 |
収益
科目 | 合計 |
---|---|
売上 | 150,000円 |
経費
科目 | 合計 |
---|---|
消耗品費 | 40,000円 |
1年目は、収益11万円 – 経費4万円 で 11万円の黒字です。
期初の資産と資本は5万5千円で同じ額になります。
期末の資本9万5千円 に黒字11万円 を足すと、期末の資本 20万5千円 と同じ額になります。
2年目(繰越処理)
2年目の期初は、普通預金に17万5千円残っています。売掛金も、Googleアドセンス12月分の1万円と、マイクロアド12月分の1万円が未入金なので、繰越処理をします。相手科目は「元入金」です。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 |
---|---|---|---|
1/1 | 普通預金 175,000円 | 元入金 175,000円 | (前期繰越)普通預金 |
1/1 | 売掛金 10,000円 | 元入金 10,000円 | (前期繰越)Googleアドセンス 12月分売上 |
1/1 | 売掛金 10,000円 | 元入金 10,000円 | (前期繰越)マイクロアド 12月分売上 |
元入金の合計は19万5千円です。
昨年の期初の元入金は5万5千円でした。これは、事業主から貰った資本金のようなものです。さらに、昨年の間に、事業主借として4万円を事業主から借りています。また、黒字の11万円も、本来は事業主のお金です。事業主から借りているお金は、元入金5万5千円 + 事業主借4万円 + 黒字11万円 で20万5千円になります。
また、昨年は事業主貸として事業主に1万円を渡しています。この分を事業主から借りている20万5千円から引きます。20万5千円 – 1万円 は 19万5千円 になります。これは、2年目の元入金と一致します。
となります。
このあたりの計算は、国税庁のホームページにある、確定申告書作成コーナーで申告書を作成すれば、基本的な計算チェックは自動で行ってくれるので気にする必要はありません。仕訳帳の繰越処理、年初の元入金を使った仕訳だけきちんとできていれば大丈夫です。